実践!管理者道場:作業員が作業員を説得した!

1:生産性向上の日々

私はタイの日系企業でタイ人管理者をプロの工場管理者に育成するコンサルタントを行っています。私の手法はタイ人管理者自身が正しい考え方を身に付け、生産性向上の技術と管理技術を理解し、自らの力で現場を改善して生産性向上を行えるように育てて行きます。

2:セル生産方式の問題とは

ある指導先でセル生産システム(一人または複数の作業員がひとつの製品を作る自己完結性の高い生産方式)を導入しました。この工場では中国との競争が激化しており、タイ工場生き残りのため私の方でセル生産を提案し、導入してもらうことになったのです。セル生産導入時に最も大事なことは作業員の説得です。セル生産は作業員のやる気と多能工としての技術に品質と生産高が影響されるため、作業員がセル生産方式を納得しないまま作業に就くと効果が上がり難いのです。そのため作業員の説得が最も大きなテーマとなります。

3:セル生産がうまくいかない

私は約3ヶ月掛けてタイ人幹部にセル生産の必要性とラインの組み方を指導して、3つの課で同時にセル生産化を始めました。2つの課では成果が現れたものの、1つの課では問題多発で現場が混乱しました。私は問題の課に行き作業員を集めて直接、原因を聞いたところ「なぜ他の工程の作業をやらなければいけないのですか」「以前の生産方式の方が良いと思います」と強い反発を受けました。セル生産が成功した2つの課ではタイ人幹部が私の説明内容を作業員に伝えており、作業員が納得して作業を行ったため、効果が現れたのですが、この問題の課は私の指導を受けたタイ人幹部が途中で辞めてしまったため、セル生産の必要性などが作業員に伝わっていなかったのです。

4:作業員に説得を依頼
私はセル生産が成功している課のタイ人課長に問題の課の作業員に説明してもらおうと思い呼び出しました。「君の課ではセル生産が成功しているので、問題の課の作業員にセル生産の必要性を説明して欲しい」と頼んだところ「私が説明するより、私の課の作業員に説明させた方が良いと思います」と提案してきました。作業員が作業員を説得するなら信憑性もあるのでぜひ頼むと伝え、作業員を呼んで来てもらいました。説明に来た作業員を見て正直、驚きました。仕事などに関心がなく終業と同時に外に飛び出してサッカーで遊んでいるようなイメージの男性作業員で「彼が本当に説明できるのか?」と不安になったのです。

5:作業員が作業員を説得した!

約30名の作業員の前でこの男性作業員は次のように話し始めました。「私は研磨加工を担当しています。以前は機械に研磨品を掛けたあと、研磨が終わるまで約15分機械の前で立っているだけでした。上司からセル生産の話を聞いたときに、機械加工を待っている間に次工程の作業が出来ないかと上司に相談して、今では機械の研磨時間に4工程分の作業を行っています」「皆さんは他工程の慣れない仕事をして大変だと思います。最初、私も大変でした。でも慣れれば問題ありません。私たちの会社は中国との厳しい競争に立たされています。従来の製造方法では生き残れません。私たちは考え方を変え、作業方法を変える必要があるのです。ですからセル生産は絶対に必要なのです。皆さんもぜひ協力してセル生産に取り組んで下さい。」途中で言葉に詰まったり下手な話し方でしたが、作業員が本心から会社のためを考えて他の作業員を説得している姿を見て私は本当に感動しました。普通の作業員が私が日ごろ説明している内容を本心から理解して、行動に移している姿に感動したのです。この作業員も大変立派ですが、このような作業員を育て上げたタイ人管理者も立派です。問題の課の作業員も彼の説得で大きく発奮しました。私はこの日の午後に問題の課に入り、セル生産を完成させたのです。                            

 

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著者:UVCコンサルタント: 立川 剛
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