「実践!管理者心得」第97回目

掃除をする人の身になれ




私は現地の日系企業の5Sの指導も行っていますが、現地の管理者は「5Sとは掃除を徹底することだ」と理解している人が多いのです。確かに5Sでは掃除も大切な要素ですが、この掃除がおろそかにされていることが意外と多いのが現実です。日本人管理者も現地の管理者に「きれいに掃除をしろ」とだけ指示している人が多いのですが、掃除はそんなに簡単なものではありません。

私が5Sで掃除を指導する時には掃除場所の区分け、清掃用具、清掃方法などを細かく設定して、全従業員一人一人に「いつ」「どこを」「どのようにして」「どの程度きれいにするか」まで割り振ってしまいますが、掃除の最大のポイントは「汚さないこと」に尽きるのです。

それでは職場を汚さないようにするにはどのようにしたら良いのでしょうか。機械の多い職場ではTPM(トータル・プロダクティブ・メンテナンス:生産保全)を導入して、汚れの発生を防ぐことが大切ですが、やはり一般の職場では従業員に「掃除する人の身になれ」との心構えを持たせることが最も大事です。

ただし日本では昔は「掃除する人の身になれ」との言葉を良く使ったものですが、最近はこの感覚も薄れてしまってきたようですから、日本人管理者がまず原点に立ちかえる必要があります。

ちなみに昔の日本人の掃除とは大変厳しいものでした。桑井いねさんと言うおばあちゃんが書いてベストセラーになった「おばあさんの知恵袋」との本がありますが、これを読むと昔は家庭での掃除は1日2回があたりまえで、1回で済ませる家があると「あの家は掃除を1日1回しか行わない!」と驚かれて近所の噂になってしまうほどだったそうです。

最近では核家族化、共稼ぎが増えているため1週間に1度、休日にまとめて掃除をおこなう家が増えてきていますから、私たち日本人も世代によって掃除の価値観が異なるケースが多いと思います。

「掃除をする人の身になれ」との感覚は全員参加で掃除を行っている工場であれば比較的簡単に理解させることが可能です。なぜなら職場を汚せば掃除を行うのは自分だからです。 難しいのは外部業者に掃除を行わせている会社です。このような会社で「掃除をする人の身になれ」との意識を持たせる教育を行うと現地の管理者から必ず次のような反論が出てくるのです。

「私たちの会社は清掃業者にお金を払っている。だから清掃業者は掃除をする責任があり義務がある。従って掃除をする人の身になるなど考えなくても良い」

このような考え方を持った管理者は次のような論法で説得することになります。
1:外部業者でも私たちの会社のために働いてくれているのだから、私たちの仲間である。
2:人間として仲間に迷惑をかけないようにするのは当たり前のことである。
3:だから掃除をする人の身になって、職場を汚さないようにする。


最初は反発していた管理者も上記の論法で根気良く説得すれば必ず納得してくれます。 5Sとはこのように掃除一つ取っても実に奥が深いのです。




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著者:UVC管理者セミナー講師 立川 剛
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