「実践!管理者心得」第95回目
ディズニーランドの5Sのレベル
ディズニーランドには数多くの「伝説」があり、私もCS(顧客満足)のセミナーで紹介することが多いのですが、5Sに関する「伝説」も数多くあります。
東京ディズニーランドに行かれた方は多いと思いますが、15万坪もの敷地の中でゴミ一つ落ちていないのには驚かされます。このゴミですがディズニーランドの創始者であるウォルト・ディズニーは次のような名言を残しています。「いつもきれいにしておけば、お客様は汚さない。でも汚くなるまでほっとけば、お客様はますますごみを捨ててしまうのだ」これは一流ホテルのロビーで煙草を吸って床に捨てる人はいないでしょうが、汚れた駅のホームでは煙草を投げ捨てて靴で消す人がいるのと同じことです。
私はタイの日系企業の5Sの指導も行っていますが、いつも頭を悩ますのは掃除の基準なのです。「どの程度まで掃除を行えば良いのか」「掃除が行き届いていると言うのはどういう状態なのか」などの基準を職場の人たちに理解させるのが意外と難しいのです。ディズニーランドのマニュアルを見ると、この掃除の基準が実に分かりやすく、次のように単純明快に書かれています。
「朝一番、赤ちゃんのゲストが来て、どこを這っても良いようにしましょう」
これなら現場の作業員も簡単に理解できます。掃除のように定義付けが難しいものは個人のイメージに訴える方が効果的なのです。私は指導先の管理者に「掃除が終わったあと、床に食べ物を落としてもそれを拾って食べることが出きる状態にして下さい」「あなたたちが裸足で歩けるように掃除をして下さい」等の表現で指導を行っていますが、これは分かりやすいと好評です。
東京ディズニーランドでは「カストーディアル」と呼ばれる清掃スタッフが300名づつ交代で自分のエリアを必ず15分ごとに巡回して掃除を行っています。ある日、夜中に東京ディズニーランドの役員が園内を巡回していると、トイレから人の声が聞こえてきました。何だろうと思って中を覗いてみると、若いカストーディアルが便器に向かって話しかけながら掃除を行っていたのです。何と彼は全ての便器に名前を付けて「今日は汚れたなあ、今からきれいにしてやるからな」と話しかけて掃除を行っていたのです。
読者の皆さんはこの話しをどのように思われますか?「工場で機械に名前を付けて管理しているのは聞いたことがあるが、いくら何でも便器に名前を付けて掃除するとは信じられない!」「でっちあげの話しではないのか?」と感じたと思います。私はこの話しを信じています。と言うのは私は昔ディズニーランドの関係者と話す機会があったのですが、その時驚いたことがあるからです。
私はミッキーマウスなど「たかがマンガの主人公ではないか!」と思って話していたのですが、その関係者はあたかもミッキーマウスがこの世に実在するような感覚でいたのです。ディズニーランドには従業員にミッキーマウスはこの世に実在する生き物であると思わせてしまうくらいの強烈な企業文化があるのです。
このような強烈な企業文化の中で働く従業員ですから、中には便器に名前を付けて愛着を持って掃除を行う人がいても不思議ではありません。このように5Sはその会社の企業文化、社風に密接に関係しているのです。皆さんの会社の企業文化、社風はどの程度のレベルでしょうか?
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著者:UVC管理者セミナー講師 立川 剛
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