「実践!管理者心得」第90回目
この質問に対する私の答えは次の通りです。「海外での日系工場でも5S活動はやり方さえ正しければ、間違い無く100%成功します。」当社が5Sの指導を行っている日系の工場の5S活動は全て成功していますから、私の経験からも断言できます。
当社への5S活動活性化の依頼は創業7年から10年程度の日系工場が最も多いのですが、指導方法は工場によっていろいろなパターンを使い分けています。当社の指導先には創業30年の工場もありますが、さすがに創業30年にもなると現場の作業員、監督者、管理者も保守的な感覚が染み付いているために、通常のパターンでは5S活動の活性化、定着は難しいと判断しました。
そのためにこの工場ではいきなり5S活動の導入を行わず、当社の得意分野である「管理者のやる気を引き出す」セミナーを最初に繰り返して、管理者の方向性とやる気を十分引き出して下地を作り上げてから、5S委員会を再編成して、私が5S委員会のアドバイザーとして入る形で行いました。その結果、半年程度で5Sの状況は見違えるように向上しました。このようにやり方次第でどのような条件の工場でも5S活動は成功するのです。
私は5S活動の指導に入る際に必ず日本人管理者とタイ人管理者に次のように説明します。
「5Sほどやさしいものはありません。また5Sほど難しいものはないのです」
「皆さんは自分の家で掃除を行っていますね。夕食のあと食器を洗ったり、休日には自分の車を洗ったりしているはずです。家では本を読んだら本棚に戻すし、食器も使ったら元の場所に戻していますね。5Sは自宅で普通に行っていることを工場でも同じように行えば良いのですから、こんなに簡単なことは無いはずです。これが5Sはやさしいと言う意味です」
「それではなぜ5Sは難しいのでしょうか?」
「それは管理者であるあなたは、誰でもできるこんな簡単なことすら作業員にやらせることが出来ないからです。あなたは作業員に掃除をして下さいとか工具を使ったら元の場所に戻して下さいと指示していますね。この指示は誰でも守れる簡単なことです。しかし現実はあなたが指示したこんな簡単なことを誰も守らないのです」
「管理者であるあなたは誰もが自宅で行っている本当に簡単なことすら、作業員に指示して守らせることが出来ないのです。これが5Sの難しいところなのです」
実に5Sが管理の基礎といわれるポイントはここにあるのです。5Sのような簡単な指示すら守らせることの出来ない管理者は他の難しい指示、例えば品質、生産、コストに関する指示を守らせることが出来るのでしょうか?
「当社は5Sは駄目だが品質、生産、コストは最高の水準である」このようなことは絶対にあり得ません。5Sが駄目ならば品質、生産、コストも最低だからです。同様に「作業員に5Sの指示は守らせることが出来ないが、品質、生産、コストの指示は100%守らせることが出来る」これも当然、あり得ないのです。
誰でも出来る簡単な5Sの指示が徹底されない工場では他の指示が徹底されるはずが無いのです。工場の5Sの状態はその工場の管理者の能力と比例しているのです。