「実践!管理者心得」第82回目
GEの飛躍の秘密「ストレッチ」とは?
GEがグローバリゼーションを経営の前面に押し出して来たのは10年以上前からですが、いまや日本もその影響を受け、多くの企業が買収されています。GEの常套戦略は通貨の下落や長引く不況で資産価値が下がった国の手ごろな企業を買収してビジネスチャンスを広げるやり方です。買収された企業には徹底したリストラが断行されるのが常ですが、以前にもこのコラムで紹介したGEのジャック?ウェルチは一時期「ニュートロン」すなわち「中性子」と呼ばれていたものです。
つまり建物だけを残して人を一掃してしまう中性子爆弾と言われたのです。実際にこの中性子爆弾の効果はすさまじく1981年に40万人だったGEの社員はわずか4年で29万9千人までに激減しました。このようなジャック?ウェルチの経営手法ですが、見習うべき点も数多くあります。
そのひとつが「ストレッチ」のコンセプトです。ストレッチとは従来の改善ではとても達成出来ない目標を設定して、全く新しい発想を出し合い、革新的な方法を考え出し実践して目標を達成することを言います。モトローラーでも過去に「5年間で生産性を500倍にしよう」と目標設定して実際に達成した事例がありますが、これなども「ストレッチ」の考え方と言えるでしょう。このストレッチをもう少し具体的に見てみましょう。
GEのCLO(最高教育責任者)のスティーブ?カーは次のように説明しています。
「数人のグループにオレンジを一個渡します。そして次の2つのルールを与えます。1:全員がオレンジを1回づつ触らなくてはいけない。 2:オレンジは最初に触った人の手に戻らなくてはいけない。これを出来るだけ早く行うように指示してから開始しました。1回目は参加者はオレンジを順番に投げ合い9秒で終わりました。次にお互いの間隔を詰めて早く投げ合い7秒までに縮めました」
しかし9秒を7秒に縮めた方法は改善であり、ストレッチではありません。スティーブ?カーは次のように続けます。
「実はこれを0.5秒で行うことが可能なのです。実際に参加者は3回目は1秒以内で出来たのです。このやり方ですが全員が手を突き出しているところにオレンジを落とします。そして全員の手を触りながら落ちて行くオレンジを最初の人がキャッチするのです。これがまさにストレッチのゴールなのです」
このように現状のやり方を極限まで改善するのではなく、全く新しい方法を見つけ出して
劇的に結果を向上させてしまうのがストレッチなのです。GEは営業利益率の目標をこのストレッチにより設定、そしてあのシックスシグマを導入することにより見事、目標を達成したのです。
現状を破壊して革新的な効果を上げるストレッチですが、一般的にストレッチは組織が「誠実さ」「信用」「品質」「境界線のない行動規範」の4つの価値観を共有していないと機能しないと言われています。またストレッチは「諸刃の剣」の部分もあり、導入と展開を間違えるとあまりに高い目標設定により社員のやる気を一気に失わせてしまいます。ストレッチを行う場合はGEがシックスシグマを導入したように、社員にツールや資源、そして教育の機会を十分に提供することが大切です。
著者:UVC管理者セミナー講師 立川 剛
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