「実践!管理者心得」第81回目
食中毒事件の真の原因とは?
日本の大手食品メーカーで生産した牛乳による集団食中毒事件はタイでも報道されました。この事件の原因はマスコミでも「日ごろのずさんな工程管理」「コミュニケーションの欠如」など数多く報道されいます。私は今回の事件は決してある一部の企業の特殊な問題とは思いません。はっきり言ってどの工場でも起こり得る問題だと思うのです。「うちの工場に限ってあのような事故はあり得ない」「私の工場の管理は万全だ」との反論もあるかもしれませんが、記者会見を見る限り、事故を起こした本社の社長も現場の様子を知らず「そんなことはあり得ない」と思っていたはずです。
この「実践!管理者心得」をお読みの方は日系企業の製造業の方々だと思いますが「今回の事件は他人の会社の出来事で関係ない」と思わず、ぜひ自社にも発生し得る問題だと捉えて頂きたいのです。そして今回の事件を「5W」を使い、皆さんなりに真の原因を掴むようにして頂きたいのです。
「5W」とは問題解決の基礎でWhyを5回繰り返して真の原因を追求する手法です。例えば今回の事件では「マニュアルで洗浄を決めていたが守られなかった」とありますが、「なぜ守られなかったのだ」と考えてみます。「上司が守らなくても何も言わなかったからだ」それではもう一回なぜを繰り返し「なぜ上司は何も言わなかったのか」と考えてみます。「生産に追われて洗浄の時間が惜しかった」「洗浄しなくても清潔だと思った」などいろいろな答えが出てきます。そしてまた「なぜ?」を繰り返していくのです。これにより仮説ですが自分なりの問題の原因が掴めるはずです。そして掴んだ原因が自社で起こっていないか検証して欲しいのです。これを行えば、今回の事件が生きた教訓となり、皆さんの会社をさらに向上させるきっかけとなるのです。
今回のような事件は「正しいことを言えない雰囲気」が職場にあると発生しやすいと思います。正直なところ、工場で働いていれば生産優先の発想になりがちで「品質第一」の標語が、現場では「生産第一」となってしまいます。さらにこれが悪化すると数量を達成した人が賞賛され、品質改善の実験などで生産を遅らせる人間は極悪人になってしまいます。
これが行き過ぎると「数だけ合えば良い」の職場に雰囲気が完璧に出来あがってしまい、生産数量が達成できなくなると数合わせのため意図的に不良品を混ぜて出荷するなど、とんでもない事態が発生します。しかも出荷した不良品が相手先の受入検査を通ってしまい、クレームが来ないと「この程度は不良ではない」と不良のスペックを拡大解釈して、不良の出荷に良心の呵責を感じなくなります。このような職場では現場の作業員や監督者が「おかしいぞ」と感じても「長いものには巻かれろ」とばかり、自分をだまして職場の雰囲気に自分を合わせてしまいます。こうなると仕事のやる気も無くなり、仕事の手抜きをして、ますます不良が出るとの悪循環が形成されます。
このような雰囲気を打破して「品質第一」の価値観を職場の末端まで浸透させるには、トップの強烈なリーダーシップの発揮以外に解決の方法はありません。「企業は人」ですから人の上に立つ人次第で企業は決まるのです。皆さんの工場でも今回の事件を機にぜひ職場の雰囲気を確認されたらいかがでしょうか。
著者:UVC管理者セミナー講師 立川 剛
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