「実践!管理者心得」第77回目
出来る部下に任せすぎるのは危ない
先日、ある日系企業の社員教育の指導を行なった時の話しです。この企業のタイ人管理者と話しをしていたのですが、ある管理者が「日本人駐在員は部下に仕事を公平に与えていない。私だけに多くの仕事を押し付けるので忙しくて仕方がない」と憤慨していました。
しかし同じ課の他の管理者に聞いて見ると「日本人駐在員は私のところには大事な仕事を与えてくれない。大事な仕事はいつも特定の人に与えるので私には雑用だけが与えられる」と文句を言っているのです。
このような現象はどこの企業にも見られることです。仕事を与える側からすれば出来る部下に任せた方が仕事が速く進み、ミスが少なくて安心です。しかし仕事が出来る部下は限られているのが現実ですから、結局前述のように仕事が出来る人に重要な仕事が集中的に与えられることになってしまいます。これは次の3つの点で問題が出てきます。
1部下のモラルが低下する
仕事が出来る部下は重要な仕事がどんどん増えます。最初はやりがいを感じて処理していても、仕事の量が自分の処理能力を越えてしまうと、このやりがいは不満に転じます。一方、重要な仕事が与えられず雑用ばかりの部下は「上司は仕事を任せてくれない」と不満を感じます。このように上司が仕事を偏って与えると、全ての部下に不満の種を植え付けることになるのです。
2出来る部下の後継者がいなくなる
仕事を多く任されている部下は忙しくて、とても後継者を育成している時間がありません。
後継者を育成しながら仕事を任せて行けば負担も軽くなり、組織としての能率も向上すると指摘しても「忙しいから時間が無い」を理由に逃げられてしまいます。忙しい人ほど後継者の養成を嫌がるのが現実です。
3仕事が出来る部下が退職したらお終いである
仕事が出来る人は慢性的に、しかも絶対的に不足していますから、景気が悪くても転職が容易であることを忘れてはいけません。これは読者の皆さんも良く経験していることだと思いますが、仕事の出来る人からある日突然、辞表が出てくると一瞬にしてその部署のシステムが崩壊してしまいます。特に強い不満を持って辞める人は引継ぎを一切やらずに辞表提出、即日退社のパターンになりますから、残った部下だけでは対処が出来ず、結局日本人駐在員が当面の仕事を肩代わりすることになります。
このように「優秀な人に仕事が集中する」「不満を感じる」「それが原因で退職する」との最悪パターンを避けるには、日本人駐在員が仕事が出来る部下ばかりに仕事を与えるのではなく、仕事が出来ない部下を出来るように教育する以外に方法はありません。それには日本人駐在員自身が正しいOJTやTWIの手法を習得する必要があります。正しい手法を使い教育を行なうことにより、仕事の出来る部下を増やして強力な会社に仕上げるのも日本人駐在員に与えられた使命と言えるのではないでしょうか。
著者:UVC管理者セミナー講師 立川 剛
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