「実践!管理者心得」第76回目

品質管理と梅干しの関係とは?



私が日本人駐在員向けに出版した管理の本「実践!管理者心得」ですが、多くのお問い合わせを頂きましてありがとうございます。タイ国内では紀伊国屋、東京堂、泰文堂などでお求め頂けます。またタイ国内だけではなく当社のHPを通じて日本はもとより、アメリカ、イギリス、香港、マレーシア、インドネシア、中国からもご注文を頂いており、反響の大きさに驚いています。この場を借りてお礼申し上げます。


さてソ連の生理学者パブロフと言えば「パブロフの犬」の実験が有名です。彼はこの実験結果が元で1904年にノーベル賞を受賞しています。パブロフの犬の実験はすでにご存知と思いますが、簡単にご説明します。犬に餌を見せると犬は唾がわいてきます。パブロフは唾が出てくるのは胃でなく神経が関係していると考え、犬に餌を与える時にベルを鳴らすことにしました。これを何回も繰り返すうちに犬は餌が無くてもベルが鳴っただけで唾が出るようになったのです。パブロフはこれを条件反射と名付けて学会に発表しました。

この条件反射は私たちが梅干しを見ると唾がわいてくるのと同じことです。この条件反射は品質管理にも関係しています。私たちが「不良発生!」との言葉を聞いた瞬間、「しまった!」と動悸が激しくなり、胃がキリキリして、頭がガンガンしてくるのはこの条件反射に他なりません。これは梅干しと聞いただけで唾がわいてくるのと同じです。我々にはこのような条件反射がありますが、皆さんの会社の管理者はいかがでしょうか?不良と聞いても「ああ、そうですか」と何の条件反射も無い人が多いのではないでしょうか?

このような気の抜けた対応を見ると日本人駐在員は直ぐに「不良の意識が足りない!」「やる気が無い!」と激怒する人が多いのですが、それは間違いです。これは梅干しを知らない人や、食べたことの無い人に「梅干しを見て唾がわかないとは何事だ!」と怒っているのと同じです。梅干しを知らない人にいくら怒っても、唾がわいてくるはずも無く、怒る時間とエネルギーの無駄になり、部下の反発を招くだけです。

不良への意識付けの問題を解決するにはパブロフの学説が参考になります。パブロフは「学習により条件反射が作り上げられる」と結論づけているのです。皆さんの部下が不良と聞いて「大変だ!」と飛び上がる条件反射を作るには相手の自主性を期待するのではなく、皆さんが部下に教育しなければ駄目なのです。社員教育を行なわない限り、不良への条件反射は絶対に有り得ないのです。これはパブロフが証明しています。梅干しを見て唾がわくようにするには、梅干しが何かを説明して、実際に食べさせ酸っぱいと理解させることが大切です。この教育により初めて梅干しを見て唾がわくようになるのです。

タイの日系企業の現状を見ると梅干しのことを何も教えようとせず「なぜ唾が出ない!」と怒っている駐在員があまりにも多いように見受けられます。梅干しを知らない人、食べたことの無い人はいくら怒られても絶対に唾はわいてきません。社員教育を行なわない限り、絶対に不良への条件反射が起こらないのはノーベル賞のパブロフが証明しているのです。





著者:UVC管理者セミナー講師 立川
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