「実践!管理者心得」第71回目

品質管理は医者の治療と同じです


当社では品質管理教育ビデオの販売の他に、現地の管理者への品質管理セミナーを行なっておりますが、現地の管理者と話をしていると品質問題を解決する最初のステップである「現状把握」が実に弱いと感じています。

これは日本人駐在員にも共通するのですが、品質問題が発生した場合、建前では「現状把握のため現場に行け!」「データを取れ」と指示するのですが、無意識のうちに「あの問題の発生原因はこうである」と頭で考えてしまうのです。そのため自分で考えた問題の発生原因と現場の状況、データが合わないと「何を調べているのだ!」「データは誰がどのような測定方法で取ったのだ!」と現実の方を間違いだと決め付けてしまう人がおり、最期には「データが間違っている!」と怒り出してしまう程度の低い人もいるのが現実です。

また日本人駐在員が頭の現状把握を行なっているため現地の管理者もそれを見習ってしまい、問題が発生しても「前に日本人がこう言いましから原因はこうだと思います」と日本人駐在員の過去の言葉を現状把握としているケースすらあるのです。品質管理の下手な会社ほどこの頭で考えた現状把握を元に対策を行なっており、最初の段階で方向が違っているため従業員は無駄な努力ばかりさせられ、結果的には何の解決にもならないことが多いのです。

頭で考えた原因は過去の成功体験や日本本社での経験、そしてあくまでも自分の思い込みにしかすぎません。ご存知の通り品質管理では「データ無き者、発言権無し!」が鉄則です。しかしタイ人管理者に一方的に「問題が起きたら現状把握してデータを取れ」と言うだけでは相手も理解できないし、実行しません。現地の管理者に理解させるには易しく説明する事が大切です。そのため私は品質管理セミナーで次のような例え話をして理解させています。

私が医者だとしましょう。あなたはお腹が痛くなり、私の病院にやってきました。あなたは私の前に座り症状を説明しようとします。しかし私がそれを遮り「いや、君は何も言わなくても良い。私は医者としての経験が豊富だから君の顔を見れば分かるのだ。君は胃がんに間違い無い。手術の必要があるから覚悟してくれ」と言ったら、あなたはどうしますか?私を信用して手術を受けますか?

普通の人なら逃げ出しますね。なぜ逃げるのですか?それは医者である私があなたの話も聞かず、データも取らず自分の思い込みだけで治療を行なおうとしたからです。普通の医者はいかに経験があっても必ずあなたに症状を聞いて問診を行ないます。そしてレントゲンなど各種機器を使いデータを取ります。こうして得たデータを元にして治療方法を決めるのです。品質管理も全く同じなのです。現状把握を行なわない、データを取らないでは正しい治療は出来ません。いかに経験豊かな医者でも必ず患者のデータを取るように、いかに経験豊かな管理者でも品質問題の解決には必ず現状把握を行なわなくてはいけないのです。

このように簡単な例え話を行なう事により、誰でも簡単に納得してくれます。ぜひ今回のコラムの内容を御社の社員教育の参考にして下さい。





著者:UVC管理者セミナー講師 立川 剛
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