「実践!管理者心得」第68回目

ISOはコンクリートの救命ジャケット


タイの多くの日系企業ではすでにISO9000シリーズを取得しています。ISO 取得の目的は品質向上にありますが、現実的にはISO取得後、ISOにより品質が向上する事は極めて希だと思います。これはすでに取得した企業の方ならお分かりのはずです。

実際、当社にも以前から「ISOを取得したが、期待するほど品質が向上しないのでどうしら良いのか」「品質は何も変わらない。むしろISO関連のコストが増えたのでトータルでマイナスの感がある」との問い合わせが数多く寄せられているのです。もちろんISOを遵守して品質を改善している所もありますが、これは例外と言っても良いと思います。

一時期は「ISOを取得さえすれば品質は向上するはずだ」とあたかもISOが品質管理の終着駅だ、との幻想だけが一人歩きしていた感じがしますが、さすがに最近はこの熱も冷めてきたようです。

モトローラーの品質管理責任者リチャード・ビュートウはISOを取得すれば品質は飛躍的に向上するはずだとの過信に次のような警鐘を鳴らしています。

「ISO9000の規格に合致していても、使いものにならない製品はいくらでも出てくる。海難事故用の救命ジャケットをコンクリートで作っても、所定の手続きに従えば何も問題はない。使用者が死亡した場合、遺族がPL訴訟を起こせる事を明記さえしていればISO9000の認証が得れる。こんな馬鹿な話があるか!」

コンクリートで出来た救命ジャケットに「ISO9000取得済み」のタッグが付いてデパートに売りに出ている。このジャケットに「葬儀協会推薦」のタッグが付いていたら漫才ですが、こんな漫才みたいな話が現実的に起こり得るのがISOのシステムだとリチャード・ビュートウは看破しているのです。

彼は「システムは万能ではない。システムを過信するな。会社がシステムに取り込まれるのではなく、会社がシステムを取り込んで生かすべきだ」と言っているわけですが、私も全く同感です。ISOとはシステムであり、それだけでは紙に書かれた文章にしかすぎません。

当社では5S活動のコンサルタントも行なっており、日系企業に出向き実地指導を行なっていますが、紙に5Sのやり方を書いただけでは全く効果がありません。皆さんの企業でも5Sのポスターを貼り出しただけでは工場がきれいにならないと同じ事です。もっとも大事なのは従業員の5Sに対する意識なのです。この意識教育を抜きにしては5Sは成功しません。ISOも同じなのです。働く従業員の品質意識が低ければ、ISOを取ろうが取るまいが品質は向上しないのです。

ISO取得しても品質が向上しないのは「品質教育」を行なってないからです。「仏像作って魂入れず」の言葉ありますが、ISOという仏像を作っても魂である「品質意識」を注入しなければ、ありがたい仏像もただの木の置物にしか過ぎません。品質管理は「システム」と「品質意識」を分けて考えなくてはいけません。

ISOのシステムも大事ですが、そのシステムを遵守する、品質の良い製品を作るとの品質意識の社内教育はそれ以上に大事です。品質意識は教育を行なわなければ絶対に向上しません。ISOを取得し品質が飛躍的に良くなったと喜べるようになるには品質教育が大事です。





著者:UVC管理者セミナー講師 立川 剛
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